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『白昼夢の青写真』終えました。 どうして俺は乗り切れなかったのか編

お疲れ様です。暇です。
ということで、『白昼夢の青写真』の個人的雑感想メモを書いていきたいと思います。ネタバレです。
曲、イラスト、OP数、文章の心地よさ、どれも良かったです。

お気に入りショット貼っときます


が、全体的に感じたのは惜しさです(何日ぶり何回目?)。ルカルペリアより単純な読み応えはあるのですが、ギャップとしてはまあこっちの方が大きいです。
case1~3の出来がかなり良く、case0がなんとも言えないからです。
いや、よくねーと俺は言いたい。。。
あれは完全にキモくなりながらも『妹』というテーマをまっとうしたぞ?

プレイしてからの数時間、まあ今までですが、他の人の感想読みながら考えていました。
ストーリーの流れも問題なく、個々の話も面白く、きちんと物語として描いた伏線は回収してるし、中には目を瞠るものもある。大きな破綻ももちろんない。それなのになぜ感動することができなかったのか。
マジでなんなんだよ……って3時間ほど悩んでいましたが、些細な「?」の蓄積だと感じました。些細なことが非常に粗だって感じられるんですよね、この作品は。(好き嫌いの話も勿論なのですが。)

case0のストーリーラインは、まあこうなるんだな、と読み手が予想しやすいものです。だから多くの高評価を得ているのでしょうが、だからこそ、その想像にストーリーの関節の弱さを補強してもらっている構造になっています。先読みの予想、みたいなことする人ほどその小さな違和感を見過ごしがちになっています。
この作品を高評価しつつも残念だといった感想の多くは、中盤までは面白かったと答えていて、その理由はcase0の最初であるcaseの伏線回収の上手さや媒体を活かした構成にこれまで通りの驚きと文章で没入するからです。
しかし中盤以降に「?」が増えていくのは、世界観の深度を一段階上げてしまった、そしてもう一山つくろうとしたのが故の残念さです。case1~3の関連性の回収は見事でしたが、case0に関しての回収と設定が投げやりになっている。
この作品は結構説明してくれる優しい作品なので、なんの説明もなく触れられてもいない事項は本当に粗立って見えてしまう。

ヒロインの世凪の思考空間の能力に対していっさい科学的な観点からの疑問も考証も、SFならではのこじつけもないまま進んでいく物語。
忘却障害で記憶を忘れられない主人公と、認知症でいつか記憶が失われるヒロインの対比構造はなかなかのものですが――、
近未来、ナノマシンや生体チップが存在しうる世界。寿命もそういった科学技術の発展により200歳近くまで伸びているのに、認知症に対して突破口といえるアプローチがない。こういったことを試みたことがあるが、どれもうまくいかなった、的なものさえなかったような気がします。
ヒロインの幸せを願って行動してきた主人公が病を受け入れるばかりで一瞬たりともそういった方法の可能性を探らない違和感。
死んでしまった母のような人を増やさないために、がヒロインを犠牲にして(力を借りて)行う大義になっていて、それが最終的に大を救うか、小(ヒロイン)を救うか選ぶ的な選択の話へつながっていくのですが、そもそもヒロインの認知症に対しての何もかもを考えず、大のための研究に没頭しながらヒロインに協力してもらい、症状が進行したらヒロインとの時間のため大を見送る筋になり、ま~「?」なわけです。
アツい展開につなげたいのは超わかります。セカイ系的な構造をとるcase0、もちろん大か小か、世界か少女かの話はしたいししてほしい。大を優先したい大人、少女を優先したい主人公、健気なヒロイン、この王道中の王道への道筋がすげー雑。。。
ヒロインの思考世界の能力と認知症が全く関連性を持たず、その病気がSF的こじつけ努力を捨て、ただのお涙頂戴感動ツールになっているのも残念。
それなら純粋に、忘れてしまうヒロインとなにも忘れない主人公の一本の小説の方がまだ感動できますね。そもそも2020年現在となにも変わらない認知症のお涙を近未来SFでやる必要はあるのか? という疑問。
ヒロインの認知症と思考世界の能力になんらかの関係性があり、思考世界の能力~~すると認知症が回復するかもしれない、的なありきたりな流れでもよかったんじゃねと思いますね、少女を救うかセカイを救うかに説得力出ると思うし
とりあえず主人公はそれが不可能な可能性であるとしても、思考世界の研究の傍らで認知症への研究をするべきだった。なんか天才っぽい設定出されると見るハードルもあがるので、結局セカイ系王道路線にいき山場をそこに持っていくなら詰めていってほしい。

それと、遊馬所長が終盤で衝撃的な行動に出るのですが、アレ、これ投げた? となりましたね。とりあえずデカい悲劇をもってくればこいつ許せね~感情で物語を引っ張ることはできます。あー、マジでこれ詰めを投げるための衝撃的悲劇展開で、読み手の頭に血を上らせて目を逸らさせんのか……と邪推してしまいましたね。
そこからの実はこんな過去がありました、こんな世界の秘密はありました、に没入感を奪われましたね。所長パート純粋に長いし。
所長の過去と共に世界の謎を明かすのは良いと思うのですが、世界に蔓延している本当の病気がなあ……。
つまり、結局ヒロインの思考世界で世界を救うといっても、時間稼ぎにしかならないことが決定づけられたわけで、まあそれはそれで良いんですが、礎的な役割も悲劇的でいいんですが、全体が弱った感が否めない。

最終盤の説明貼ります。(唐突)

その他者との接続によって~、と、個としての欲望を捨て、の部分が理解できん。
前者は、脳機能強化が欲求と同等の働きをして、それにより本当の病の進行を遅らせている。一見関りのない2つが同じ結果を生み出すそれと俺は思いましたが、雑じゃね? 正直正しく理解できていないと思っているので誰か教えて欲しいです。
後者は、延命の欲望を追求していった結果として人類が陥った病に対して、自我をもう一度捨て世界となることで一時的に人類を救っているヒロイン、と俺は思いましたが、その2つって対比になりえます? 「欲望」で説明するのは人類に対してそうだけど、ヒロインに対しては当てはまらなくないか? そもそも美談風に言ってるけど、ヒロインがそれを選んだのって、もうそれしかない状態でしたよね? 
認知症の進行で進ませていたストーリーとちぐはぐなんだよなあ……そのまとめすんの。「欲望を捨て」じゃないんだよ。認知症の進行で悲しんでたら急遽脳をあれこれさせられて廃人になって、もうまともな生活が望めない状況でそれを選んだとして選択になりえるのか。
ま、コイツが美談ぽっく語らなければ解決するのでしょうが。した、じゃなくさせたなんだよね。そこで「?」ってなる。

その他者との接続によって~、では。
もう、ヒロインの個として主人公と生きたいという欲求が果たされず、世界そのものとなった少女の共有された意識にその不満が眠り続けるから、人類は強い欲求を持つのと同等の効果を得られていて~ならまだふむ……になれたんですがね。

case0はこういう「?」ばっかだった。
俺の理解力不足は多くあることを自覚しつつ、感動って理解を越えたものじゃないですか。だから老若男女、リテラシーの差こそあれ胸が震えて涙を流すわけです。
理解力不足でも感動できるんです、『本物』であれば。